肺小細胞癌におけるEZH2高発現を報告

肺癌の組織型の一つ、肺小細胞癌は非常に予後不良な肺癌として知られている。今回、ゲノムサイエンス分野の佐藤輝幸研究員(現東北大学呼吸器内科)、金田篤志准教授(現千葉大学分子腫瘍学)らは、肺小細胞癌におけるEZH2高発現とその標的遺伝子発現低下が不良予後と相関することをScientific Reports誌に報告した(published on line, 29 May 2013)。

発現アレイ解析の結果、肺小細胞癌はEZH2を含むポリコーム複合体PRC2の構成要素が非常に高く発現していることを同定した。EZH2はヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)をメチル化修飾することが知られ、H3K27me3修飾を受けている遺伝子をChIP-seq解析したところ、正常細胞と肺小細胞癌で共通して修飾されている遺伝子はES細胞の修飾遺伝子とよく共通したが、正常細胞では修飾されておらず肺小細胞癌でのみ修飾されている遺伝子は、ES細胞の修飾遺伝子以外に広がっていた。最も発現抑制を受ける遺伝子JUBは、肺小細胞癌細胞株に導入すると増殖抑制作用があるだけでなく、遺伝子発現低下が肺小細胞癌臨床例の不良予後と相関した。肺小細胞癌では神経内分泌特性を持つクラシック型の症例で発現が高いマーカー遺伝子が報告されていたが、今回同定されたPRC2標的遺伝子群とクラシックマーカー群を組み合わせることで肺小細胞癌は明瞭に予後不良と予後良好群に分類された。またEZH2阻害剤DZNepや、最近報告された選択的EZH2阻害剤GSK126投与により肺小細胞癌細胞株の増殖は抑制された。肺小細胞癌においてEZH2高発現はその標的遺伝子の発現低下を引き起こし発癌過程において重要な役割を果たしていると考えられた。

Sato T, Kaneda A, Tsuji S, Isagawa T, Yamamoto S, Fujita T, Yamanaka R, Tanaka Y, Nukiwa T, Marquez VE, Ishikawa Y, Ichinose M, Aburatani H.

PRC2 overexpression and PRC2-target gene repression relating to poorer prognosis in small cell lung cancer.

Sci Rep 3:1911, 2013. doi:10.1038/srep01911

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