腎細胞癌に対する新規治療標的分子TLR3

進行性腎細胞癌に対しては従来の化学療法や放射線療法が全く効かないことか ら、腎細胞癌に対する新たな治療法の開発が望まれてきました。一方、ごく一 部の腎細胞癌症例にはインターフェロン療法が奏功するという、他の癌とは異 なった特徴が知られています。ゲノムサイエンス研究室の森川鉄平(東京大学 医学系研究科修了、現人体病理学教室助教)らは、腎細胞癌に対する新規標的 分子の探索のため、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行 い 、toll-like receptor 3 (TLR3)が腎細胞癌特異的に発現亢進していること を見出しました。TLR3はリガンド刺激によりインターフェロンの産生を誘導し て自然免疫応答に働く分子であり、腎細胞癌に対する新規治療標的となる可能 性が示唆されました。抗TLR3モノクローナル抗体を用いた免疫染色では、腎細 胞癌の原発巣189例中139例(73.5%)および肺転移巣8例中6例(75%)で、癌細胞特 異的なTLR3の発現亢進が確認されました。腎癌細胞株を用いた解析では、リガ ンド刺激によって腎癌細胞におけるインターフェロン産生およびアポトーシス が誘導され、TLR3依存的な増殖抑制効果が発揮されることがわかりました。さ らに、インターフェロンとTLR3リガンドが腎癌細胞株に対して相乗的な増殖抑 制効果を発揮することがわかりました。以上のことから、腎細胞癌で特異的に 高発現しているTLR3は、腎細胞癌に対する有望な新規治療標的であると考えら れます。

Teppei Morikawa, Akira Sugiyama, Haruki Kume, Satoshi Ota, Takeshi Kashima, Kyoichi Tomita, Tadaichi Kitamura, Tatsuhiko Kodama, Masashi Fukayama, and Hiroyuki Aburatani.

Identification of Toll-like Receptor 3 as a Potential Therapeutic Target in Clear Cell Renal Cell Carcinoma.

Clinical Cancer Research 13(19):5703-9. 2007

PubMed

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