β-カテニンとNotchシグナルのクロストーク

熊本大学発生医学研究センターの田賀研究室との共同研究により、神経前駆細胞(NPC)の分化におけるβ-カテニンの役割を明らかにしました。FGF2はNPCの増殖を促進する一方、分化を抑制することが知られています。PI3キナーゼ活性化を通じてのFGF2シグナルはGSK3bを不活化することを通して、Wntシグナルのカノニカル経路とは別にβ-カテニンの蓄積を引き起こすことを見いだしました。核内に蓄積したβ-カテニンは転写因子TCFを活性化して細胞増殖を引き起こし、Notch1-RBP-Jkappaシグナルを増強することによって神経細胞分化を抑制しました。β-カテニンとNotch1の細胞内ドメインはhes1遺伝子のプロモータ領域で複合体を形成し、hes1遺伝子の発現を維持しました。活性型GSK3bの発現は幹細胞の自己複製を阻害し、神経分化を促進することから、シグナル経路のクロストークが神経幹細胞の維持に重要であることが示された。本共同研究において野中綾研究員が樹立した安定的なβ-カテニンのChIP(クロマチン免疫沈降)実験が重要な役割を果たしました、本成果は10/13付けMol Cell Biol.電子版に掲載されました。

Shimizu T, Kagawa T, Inoue T, Nonaka A, Takada S, Aburatani H, Taga T.
Stabilized {beta}-catenin functions through TCF/LEF proteins and the Notch/RBP-J{kappa} complex to promote proliferation and suppress differentiation of neural precursor cells.
Mol Cell Biol. 2008 Oct 13. [Epub ahead of print]

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