原発性肝細胞癌に対する新規標的分子ROBO1

原発性肝細胞癌は予後の悪い癌種の一つである。世界的に慢性ウイルス感染患者が年々増加し、その多くは肝硬変そして肝細胞癌に至るケースが多いことから、肝硬変から肝細胞癌における段階の早期診断法、そして肝細胞癌の治療法は非常に強く要望されているものであり、画期的な解決のない場合は、今後10-15年間は死亡数が増加傾向をたどると考えられている。
我々は、原発性肝細胞癌の診断・治療における新規標的分子の探索のため、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行い roundabout, axon guidance receptor, homolog 1 (Drosophila) , ROBO1/DUTT1 が肝細胞癌特異的に発現亢進していることを見出し、そのモノクローナル抗体の作製を実施した。
抗ROBO1抗体を用いた免疫組織染色解析により、ROBO1が98例中83例において高頻度で発現亢進することを明らかにした(陽性率84.7%)。さらにROBO1が切断(シェディング)され、N末端領域(細胞外ドメイン)が肝癌細胞株(PLC/PEF/5、HepG2等)の培養上清のみならず、肝細胞癌患者血清中にも存在することを証明した(11例中6例)。また、抗ROBO1モノクローナル抗体がROBO1発現HEK293細胞と肝癌細胞株PRF/PLC/5に対して補体依存性細胞障害活性(CDC活性)と抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)を有することも明らかにした。以上より、本研究にて、新規肝細胞癌抗原ROBO1を同定し、ROBO1抗原を標的とした抗ROBO1モノクローナル抗体による肝細胞癌の治療の可能性、及び可溶型ROBO1を指標とした肝細胞癌の血清診断の可能性を示すことに成功した。

Ito H, Funahashi S, Yamauchi N, Shibahara J, Midorikawa Y, Kawai S, Kinoshita Y, Watanabe A, Hippo Y, Ohtomo T, Iwanari H, Nakajima A, Makuuchi M, Fukayama M, Hirata Y, Hamakubo T, Kodama T, Tsuchiya M, Aburatani H.
Identification of ROBO1 as a Novel Hepatocellular Carcinoma Antigen and a Potential Therapeutic and Diagnostic Target.
Clin Cancer Res. 12(11):3257-64. 2006

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