大腸癌における3群のエピジェノタイプを同定

ゲノムサイエンス分野では、大学院4年八木浩一、准教授金田篤志らが、大腸癌におけるDNAメチル化網羅的解析の結果から3群の異なるエピジェノタイプを同定し、Clin Cancer Res誌に報告した(published online 22 Dec 2009)。
癌発生にはジェネティック異常の蓄積とエピジェネティック異常の蓄積が密接に関与する。例えばエピジェネティック異常の一つであるIgf2遺伝子インプリンティング消失 (Igf2 LOI)を持ったIgf2 LOIマウスでは、発癌剤Azoxymethane投与やApc遺伝子変異を持つMinマウスとの交配により、腸管腫瘍発症リスクが約2倍に上昇する。
本研究では大腸癌のエピジェネティック変異としてDNAメチル化異常を解析した。まず、大腸癌細胞株においてプロモーター領域がメチル化されている遺伝子をMeDIP-chip法にてゲノム網羅的に抽出した。発現サイレンシング、及び脱メチル化による発現回復を、発現アレイにて解析し、得られたサイレンシング候補遺伝子から、新規メチル化マーカーを44個樹立した。従来のマーカー16個と合わせた60領域についてメチル化状態をMALDI-TOF MS (MassARRAY)による質量分析法で定量解析した。大腸癌149症例は、メチル化情報を用いた2方向性階層的クラスタリングにより3つのエピジェノタイプに分類された。適切なエピジェノタイピングマーカーも確立した。
DNAメチル化以外に、癌遺伝子BRAF・KRAS変異、p53免疫染色、マイクロサテライト不安定性について解析した。強い相関が高メチル化群とBRAF遺伝子変異、中間メチル化群とKRAS遺伝子変異、にそれぞれ認められ、低メチル化群と合わせ、これらは大腸癌発生の異なる分子機構を示唆していると考えられた。 KRAS変異(+)の中間メチル化群症例は有意に予後が不良であり、今回のエピジェノタイピングは臨床的にも重要と思われる。

Koichi Yagi, Kiwamu Akagi, Hiroshi Hayashi, Genta Nagae, Shingo Tsuji, Takayuki Isagawa, Yutaka Midorikawa, Yoji Nishimura, Hirohiko Sakamoto, Yasuyuki Seto, Hiroyuki Aburatani, & Atsushi Kaneda.
Three DNA methylation epigenotypes in human colorectal cancer.
Clin Cancer Res. Published Online (December 22, 2009), doi:10.1158/1078-0432.CCR-09-2006
PubMed

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