癌遠隔転移に関わるS100A8-SAA3-TLR4経路(Nature Cell Biology)

ゲノムサイエンス部門の渡辺亮研究員は、東京女子医科大学の丸義朗教授、平塚佐千枝助教(留学中)らとの共同研究によって、転移を促す新しいシグナ ル経路(S100A8-SAA3-TLR4)を発見した。これまでに前転移状態の肺で化学走化因子S100A8およびS100A9の発現亢進に関する報告 (Nature Cell Biol 2006)に引き続き、液性因子serum amyloid A (SAA) 3の発現が亢進することを示した。SAA3はTLR4 (Toll like receptor4)に認識され、NFkBを介した免疫応答シグナルを活性化する結果、転移が促進されることを示した。さらに、癌細胞を皮下移植した担癌 マウスに抗SAA3抗体を投与すると、この一連のシグナル経路(S100A8-SAA3-TLR4)が遮断され、転移が抑制されることを確認した。 TLR4は自然免疫系の受容体としてリポポリサッカライド(LPS)などの毒素を認識し、感染からの防御を担っている。今回の結果は、本来は感染防御を担 う自然免疫系により形成された炎症様の環境が癌細胞の遊走を促進していることを示唆している。これらの結果は9/28付けのNature Cell Biology電子版に掲載された。

The S100A8?serum amyloid A3?TLR4 paracrine cascade establishes a pre-metastatic phase.
Sachie Hiratsuka, Akira Watanabe, Yoshiko Sakurai, Sachiko Akashi-Takamura, Sachie Ishibashi, Kensuke Miyake, Masabumi Shibuya, Shizuo Akira, Hiroyuki Aburatani and Yoshiro Maru

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