肝細胞がんにおける高頻度ゲノム変異を同定

ゲノムサイエンス分野の辰野健二、上田宏生,辻真吾、山本尚吾研究員らは国立がん研究センターの柴田龍弘分野長、十時泰研究員および米国ベイラー医科大学David Wheeler教授と共同で、日本人を中心とする肝細胞がん症例608例のゲノム解読を行い、新たな治療標的候補の同定、また日本人に特徴的な発がん要因の存在の推定に成功しました。
本研究は、これまでで世界最大規模の肝細胞がんゲノム解析であり、重要なゲノム変異を最も高精度に同定したもので、今後の肝細胞がんの治療開発推進に重要な貢献をするものと考えられます。
本研究では次世代シーケンサーを用いた全遺伝子の体細胞変異を同定することで、同じ肝細胞がんであっても症例によってその原因となる因子の組み合わせが異なることを示すとともに、日本人において特徴的な遺伝子変異パターン(シグネチャー)を見出しました。これまでに肝細胞がんの発がん危険因子として知られる肝炎ウイルス感染とは異なる、未知の肝細胞がんの発がん要因が存在する可能性を世界でも初めて明らかにした成果です。また、がんゲノム解読データを元に演繹的に既知の発がん因子との関連や新たな原因を探索する研究は極めて新しい研究分野であり、近年、日本においても漸増している非肝炎ウイルス性肝細胞がんの治療・予防への貢献も強く期待されます。
本研究は第3次対がん総合戦略研究推進事業「国際協調に基づく日本人難治がんゲノムデータベースの構築(国際がんゲノムコンソーシアム:International Cancer Genome Consortium)」により行われたもので、解析検体の収集については日本大学消化器外科(高山忠利教授、緑川泰医長)、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科(国土典宏教授)、人体病理(深山正史教授)との共同研究として実施されました。
本研究成果は国際科学誌「Nature Genetics」に2014年11月2日付(日本時間11月3日)オンライン版で発表されました。

Yasushi Totoki, Kenji Tatsuno, Kyle R. Covington, Hiroki Ueda, Chad J. Creighton, Mamoru Kato, Shingo Tsuji, Lawrence A. Donehower, Betty L. Slagle, Hiromi Nakamura, Shogo Yamamoto, Eve Shinbrot, Natsuko Hama, Megan Lehmkuhl, Fumie Hosoda, Yasuhito Arai, Kim Walker, Mahmoud Dahdouli, Kengo Gotoh, Genta Nagae, Marie-Claude Gingras, Donna M. Muzny, Hidenori Ojima, Kazuaki Shimada, Yutaka Midorikawa, John A. Goss, Ronald Cotton, Akimasa Hayashi, Junji Shibahara, Shumpei Ishikawa, Jacfranz Guiteau, Mariko Tanaka, Tomoko Urushidate, Shoko Ohashi, Naoko Okada, Harsha Doddapaneni, Min Wang, Yiming Zhu, Huyen Dinh, Takuji Okusaka, Norihiro Kokudo, Tomoo Kosuge, Tadatoshi Takayama, Masashi Fukayama, Richard A. Gibbs, David A. Wheeler*, Hiroyuki Aburatani*, Tatsuhiro Shibata*
“Trans-ancestry mutational landscape of hepatocellular carcinoma genomes”
Nature Genetics, 2nd Nov., advanced online publication [doi:10.1038/ng.3126]

Nature Genetics誌 ウェブサイト
東京大学 記者発表ページ

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