脳腫瘍である神経膠腫の悪性化・再発時に起きるゲノム変化を解明

神経膠腫(グリオーマ)は、代表的な脳腫瘍のひとつです。診療経過中に悪性に転化することが知られており、多くの患者さんにおいて、この悪性への転化が死亡の原因になっています。しかしながら、この悪性転化の機構については、未だ良く分かっておらず、そのため再発時の治療法選択がしばしば困難です。

そこで今回、東京大学医学部附属病院の武笠晃丈特任講師及び大学院生の相原功輝らは、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のグループなどと共同で、低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)が診療経過中に悪性に転化し再発する過程に生じる遺伝子変異を、全遺伝子解析を行って詳細に解析しました。これにより、再発に際しては新たな遺伝子変異が出現し、なかでも抗がん剤の一種であるアルキル化剤による治療が解析した23症例中10例で行われていましたが、その症例の半数程度で特定の塩基変異(シトシン/グアニンがチミン/アデニンに置換する変異)が高頻度に生じることを観察しました。

本成果は、特に低悪性度の腫瘍に対しての抗がん剤治療法の最適化について、検討を促す契機となるものです。なお、本研究は次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムの一環として行われたものであり、また、医学研究における国際共同研究であることが特筆すべき点です。本成果は、米国の論文誌「Science」への掲載に先駆け、オンライン版の「Science Express」に米国東部時間12月12日に掲載されました。

Brett E. Johnson, Tali Mazor, Chibo Hong, Michael Barnes, Koki Aihara, Cory Y. McLean, Shaun D. Fouse, Shogo Yamamoto, Hiroki Ueda, Kenji, Tatsuno, Saurabh Asthana, Llewellyn E. Jalbert, Sarah J. Nelson, Andrew W. Bollen, W. Clay Gustafson, Elise Charron, William A. Weiss, Ivan V. Smirnov, Jun S. Song, Adam B. Olshen, Soonmee Cha, Yongjun Zhao, Richard A. Moore, Andrew J. Mungall, Steven J.M. Jones, Martin Hirst, Marco A. Marra, Nobuhito Saito, Hiroyuki Aburatani, Akitake Mukasa, Mitchel S. Berger, Susan M. Chang, Barry S. Taylor, Joseph F. Costello. Mutational Analysis Reveals the Origin and Therapy-driven Evolution of Recurrent Glioma. Science 2013

http://www.sciencemag.org/content/early/2013/12/11/science.1239947

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