ゲノム多様性

ヒトゲノムコピー数多型

従来より知られている1塩基多型(SNP)に加えて、最近になってヒトゲノムには遺伝子をまるごと含むような大きなコピー数の多型(CNV:copy number variation)の存在が明らかになってきました。世界の多様な人種におけるコピー数多型の全容を明らかにするため、世界の7つの研究センターおよび企業がヒトゲノム構造多型コンソーシアム (genome structural variation consortium)を作り第一世代のヒトゲノムCNV mapの作成を行いました。当施設では、Affymetrix社と共同で高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを使いCNVの解析を行いました。

癌におけるゲノム変異解析(アレル別コピー数解析)

癌においては、通常細胞内で1本ずつあるはずのアレル(両親由来のそれぞれのゲノム)が欠質、増幅等によってコピー数の変化が見られます。この2つのアレルは突然変異によって、もしくはもともと両親より遺伝したときから機能が異なり、この異なるアレルの種類とコピー数の組み合わせによって複雑なゲノム変異(genome imbalance)を呈して発癌、悪性化、治療応答性に関与します。 当研究室では高密度SNPタイピングアレイを用いて、様々な癌における上記のようなゲノム変異解析(アレル別コピー数解析)を行っています。この解析は癌の層別化治療の分子標的の探索に用いられるほか、遺伝子発現に比較して安定したゲノムの情報を捕らえることにより、発癌のメカニズムの解明に非常に有効です。

薬剤応答性の個人差のスクリーニングとゲノム解析

薬剤応答性、副作用には個人差があり、ゲノムの多型の影響が見られます。個人差のメカニズムの解明と患者の層別化のために多型解析を行うには、薬剤投与の条件を患者間で整えることが難しく、解析可能な数をそろえることが難しいことが多いとされています。不死化リンパ球細胞株パネルを用いることにより、薬剤投与条件を揃えて応答を見ることができ、多型情報と組み合わせて応答性に関わる多型の解析が可能となります。当研究室では多数の不死化細胞リンパ球を同時に薬剤感受性のスクリーニングできる系を開発し、主に抗がん剤の感受性に関わる多型の特定を行っています。