ミスマッチ修復遺伝子MLH1のhaploinsufficiencyによるindel(挿入欠失)変異の増加を膵癌の全エクソン解析により同定

膵癌症例の大部分は転移病変を伴い、種々の治療にも抵抗性である一方、極めて間質成分に富んだ組織像を呈し、さらに自己分解しやすいことからゲノム解析が困難な腫瘍として知られています。そこでゼノグラフトあるいは細胞株はゲノム解析に利用されるのみならず、検出された変異の機能解析や薬剤応答の検定にも有用なリソースとなります。

ゲノムサイエンス研究室の王凌华博士研究員らは膵癌細胞株15例の全エクソーム解析に加えて、SNPアレイによるコピー数解析、RNA-seqによるトランスクリプトームデータとの統合を行い、KRAS, SMAD4, TP53変異およびp16遺伝子欠失が高頻度に認められることに加えて、nonsense-mediated decayにより変異転写産物が分解されることを示しました。さらにミスマッチ修復遺伝子MLH1のhaploinsufficiencyによりindel(挿入欠失)変異が増加し、腫瘍の進展に寄与する可能性を見いだし、同様な現象は腎細胞癌においても確認されました。

これらの研究成果は、Genome Research誌のオンライン版に掲載され、2012年2月のcancer genomics特集号に掲載される予定です。なお、本研究は癌研究所、国立がん研究センターとの共同で実施されました。

Wang L, Tsutsumi S, Kawaguchi T, Nagasaki K, Tatsuno K, Yamamoto S, Sang F, Sonoda K, Sugawara M, Saiura A, Hirono S, Yamaue H, Miki Y, Isomura M, Totoki Y, Nagae G, Isagawa T, Ueda H, Murayama-Hosokawa S, Shibata T, Sakamoto H, Kanai Y, Kaneda A, Noda T, Aburatani H. Whole-exome sequencing of human pancreatic cancers and characterization of genomic instability caused by MLH1 haploinsufficiency and complete deficiency. Genome Res. 2011 Dec 7. [Epub ahead of print]

doi: 10.1101/gr.123109.111.
PMID: 22156295

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