クロマチン免疫沈降シーケンシング解析

概要

遺伝子発現を制御する転写因子は、DNAに直接あるいは間接的に結合する性質をもつタンパク質群で、ヒトでは約2000あると言われています。クロマチン免疫沈降(chromatin immunoprecipitation, ChIP)は、生体内におけるDNAに結合するタンパク質の結合部位を同定するために行われている技術です。DNAに結合しているタンパク質をホルムアルデヒドで架橋し、超音波でDNAの断片化を行った後、タンパク質を特異的に認識する抗体でDNA-タンパク質複合体を捕捉し、回収します。回収されたDNA-タンパク質複合体は、加水分解反応で分解を受け、DNAのみの回収が可能になります。回収されたDNA断片(目的のタンパク質が結合する領域)の配列は、次世代シーケンサーによって決定されます。

クロマチン免疫沈降

転写因子とDNAの結合を安定化させるためにホルムアルデヒドなどによってDNA-タンパク質間を架橋します。架橋反応は大過剰のグリシンによって停止します(低いpHで反応性が低下し、余剰のホルムアルデヒドがグリシンと反応するため)。架橋されたDNA-タンパク質は高温下での加水分解などを行わない限り安定です。その後、超音波処理を行い、タンパク質DNAの断片化を行います。配列決定のためにマイクロアレイやシーケンス解析を行う場合は、数百塩基の長さまで断片化を行います。特異的抗体を用いた免疫沈降によって、目的のDNA-タンパク質複合体を捕捉し、回収します。回収された複合体は、高温下での加水分解を行うことで、DNA-タンパク質間の結合を分解し、DNAのみを回収します。

架橋:ホルムアルデヒドでDNAとタンパク質感を架橋します

DNA断片化:架橋されたDNA-タンパク質複合体を超音波で断片化します

免疫沈降:タンパク質を特異的に認識する抗体を加え、タンパク質ーDNA複合体を補足します

複合体回収:抗体に認識されたDNA-タンパク質複合体をビーズに吸着させて回収します

脱架橋:加水分解反応でDNAとタンパク質間の架橋を外し、DNAを回収します

次世代シーケンサー

回収されたDNA断片の塩基配列は、次世代シーケンサーやゲノムタイリングアレイによって決定されます。