ヒストン脱メチル化酵素JMJD1Aの二段階脱メチル化機構の解明

ヒストン脱メチル化酵素JMJD1Aは、転写抑制性のヒストン修飾であるH3K9me2を基質とし、二つのメチル基を除去することで種々の遺伝子の転写を促進することが知られている。種々の文献報告から、JMJD1Aは抗癌剤標的分子の一つとして注目されているが、その分子構造および細胞内における詳細なエピゲノム制御機構に関しては現在のところ情報が少ない。今回、ゲノムサイエンス分野の合田哲研究員、砂河孝行研究員 (現東京医科歯科大学難治疾患研究所助教)らは、JMJD1Aのホモ二量体形成と酵素活性制御の関連性を明らかにし、Journal of Biological Chemistry誌に報告した (published on line, 8 Nov 2013)。

Blue-Native PAGE、および種々のドメイン欠損蛋白質を用いた免疫沈降実験から、リコンビナントJMJD1Aが触媒領域を介してホモ二量体を形成することが明らかとなった。そこでホモ二量体形成と脱メチル化活性との関連性の検証を行った。H3K9me2ペプチドを基質とした脱メチル化反応を行い、MALDI-TOF-MSにより脱メチル化反応中間体であるH3K9me1、および最終産物であるH3K9me0の経時変化を追跡した。その結果、中間体のH3K9me1が系中にわずかしか存在しない状態で速やかにH3K9me0が生成されることがわかった。この結果とSPR解析、およびFDH counterscreenアッセイによる触媒効率の検討結果から、二段階の脱メチル化反応が連続的に制御されていることが示唆された。そこで、一方に局所変異を加えた不活性型を用いたヘテロ二量体を二段階精製により調製し、その酵素活性についてホモ二量体と比較検討した。その結果、ヘテロ二量体では二段階目の脱メチル化反応効率が著明に低下した。以上の結果から、ホモ二量体の有する二つの活性中心により、二段階の脱メチル化反応が精密に制御されていることが明らかとなった。

Satoshi Goda, Takayuki Isagawa, Yoko Chikaoka, Takeshi Kawamura, and Hiroyuki Aburatani.
Control of Histone H3 Lysine 9 (H3K9) Methylation State via Cooperative Two-step Demethylation by Jumonji Domain Containing 1A (JMJD1A) Homodimer.
J Biol Chem. 2013 Nov 8. [Epub ahead of print]
PMID: 24214985

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