小脳神経膠腫のゲノム解析

近年、次世代シークエンスによる網羅的癌ゲノム解析が精力的に行われ、神経膠腫においても主要なゲノム異常が同定されてきました。また、神経膠腫の発生部位により、異なったドライバー遺伝子が存在することも近年の研究で明らかとなってきました。一方で小脳に発生する神経膠腫は比較的稀であることもあり、これまで分子レベルでの詳細な研究がされてきませんでした。

今回大学院生の野村昌志(東京大学 脳神経外科)は、手術により採取された小脳神経膠腫の腫瘍検体を用いて、次世代シークエンサーによる統合的オミクス解析を行いました。結果、小脳神経膠腫にはこれまで多くの研究がなされている大脳神経膠腫とは異なったゲノム、エピゲノム異常が存在することを明らかにしました。また、このような差異は起源細胞の違いを反映している可能性が示唆されました。

本研究は本学付属病院脳神経外科の武笠晃丈講師、齊藤延人教授らとの共同研究により行われたもので、科学雑誌「Acta Neuropathologica」に掲載されるのに先立ちオンライン版で公開されました。 (2017年8月29日付け: 日本時間8月30日)

 

雑誌名: Acta Neuropathologica

論文タイトル: Distinct molecular profile of diffuse cerebellar gliomas

著者: Masashi Nomura, Akitake Mukasa, Genta Nagae, Shogo Yamamoto, Kenji Tatsuno, Hiroki Ueda, Shiro Fukuda, Takayoshi Umeda, Tomonari Suzuki, Ryohei Otani, Keiichi Kobayashi, Takashi Maruyama, Shota Tanaka, Shunsaku Takayanagi, Takahide Nejo, Satoshi Takahashi, Koichi Ichimura, Taishi Nakamura, Yoshihiro Muragaki, Yoshitaka Narita, Motoo Nagane, Keisuke Ueki, Ryo Nishikawa, Junji Shibahara, Hiroyuki Aburatani, Nobuhito Saito

ウェブサイト:https://doi.org/10.1007/s00401-017-1771-1

 

なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「次世代がん研究シーズ戦略育成プログラム(P-DIRECT)」及び「次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)」の科学研究費補助金の支援を得て行われました。

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