青壮年の視床グリオーマにおけるヒストンH3.3変異

近年グリオーマにおいて、部位特異的、年齢特異的な遺伝子変異が注目されており、ヒストンH3のvariantであるH3.3をコードするH3F3Aの遺伝子変異もその一つです。とくにH3F3A K27M変異は正中に位置するグリオーマのなかでも20歳までの若年症例に存在することが知られていました。今回、本学医学部附属病院脳神経外科の武笠晃丈先生らとの共同研究により大学院生の相原功輝さん(東大脳神経外科)は視床グリオーマのターゲットシークエンスを行うことによって、50歳未満の青壮年症例にもH3F3A のK27M変異が高頻度に存在することを示しました。またDNAメチル化解析にてH3F3A K27Mの変異を持つ50歳未満の成人視床グリオーマは、同変異を持つ小児の視床グリオーマやDIPG(diffuse intrinsic pontine glioma)と同様のメチル化プロファイルを示すhomogeneousな腫瘍なのに対し、H3F3A K27M変異を持たない50歳以上の視床グリオーマは多様なメチル化プロファイルを持ちheterogeneousな腫瘍であることが示されました。同じテント上のgliomaでも視床という発生部位および発症年齢によって、腫瘍の性質、治療標的が異なることが明らかとなり、今後のグリオーマ治療を考える上で重要な知見と考えられます。以上の研究成果はNeuroOncology誌に掲載されました。

Aihara K, Mukasa A, Gotoh K, Saito K, Nagae G, Tsuji S, Tatuno K, Yamamoto S, Takayanagi S, Narita Y, Shibui S, Aburatani H, Saito N. H3F3A K27M mutations in thalamic gliomas from young adult patients. Neuro Oncol. 2013 Nov 26. [Epub ahead of print]

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